こんにちは。化工見習いです!
今回は、管型反応器の定容系、非定容系の違いが分からないとの声をいただきましたので、簡単にまとめたいと思います!
定容、非定容とは何か。それから、各計算例を紹介します!

「定容」って何の体積が一定なんだろう??反応工学難しい。。。
*この記事において、成分Aを限定反応物質とします。
管型反応器の設計方程式
まずは、管型反応器の設計方程式を紹介します。
管型反応器の、ある微小区間での収支を考えます。それぞれの項は以下
- 流入流量\(\ F_A(V)\) [mol/s]
- 流出流量\(\ F_A(V+ΔV)\) [mol/s]
- 生成量\(\ r_AΔV\) [mol/s]
ですので、収支をとると
\(\ F_A(V) – F_A(V+ΔV) + r_AΔV = 0\)
\(\ F_A(V+ΔV)\)をテイラー展開して第2項までとって近似すると
\(\displaystyle F_A(V+ΔV) ≒ F_A(V) + (\frac{dF_A}{dV})_VΔV\)
よって\(\displaystyle \frac{dF_A}{dV} = r_A\)
ここで\(\ dF_A = -F_{A0}dx_A\)より
\(\displaystyle F_{A0}\frac{dx_A}{dV} = -r_A(x_A)\)
これを積分し、\(\ F_{A0}=qC_{A0}\)とすると (\(\ q\):体積流量 [m^3/s])
\(\displaystyle {\tau}=\frac{V}{q}=C_{A0}\int_0^{x_A} \frac{1}{-r_A(x_A)}dx_A\)
となり、これが管型反応器の設計方程式となります。
あとは、反応速度式さえ定まれば、解けるということです。
では、定容系と非定容系について説明していきます。
定容系
定容系とは、反応物の体積や密度が変わらない系のことで
- 液相反応
- 定容回文反応器での反応
- モル数の変化しないような気相反応(例 A+B→2C)
このようなものが定容系に相当します。
「技師基礎」ぐらいであればこれくらいの理解で大丈夫です。実際ここ数年の問題では定容系しか出題されていません。
*「定容」とは「反応器の体積が一定」という意味ではないことに注意!

反応混合物の体積が一定ってことなんだね!
定容一次反応の計算例
せっかくなので、一次反応ではどのような計算結果になるのか、実際に積分して求めてみたいと思います。
\(\ -r_A=kC_A=kC_{A0}(1-x_A)\)として
\(\displaystyle {\tau}=\frac{1}{k}\int_0^{x_A} \frac{1}{1-x_A}dx_A\)
\(\ x_A\)について積分すれば
\(\displaystyle {\tau}=-\frac{1}{k}ln(1-x_A)\)
定容系では積分がかなり簡単で、2次反応以降も、高校数学基礎レベルの積分です。
非定容系
次に非定容系についてです。
非定容系とは、先ほどの定容系以外の系ですので、モル数および体積が反応の前後で変化します。
ということは、「各成分の濃度変化は、定容系の場合の変化(成分が消費または生成されることによる変化)に加えて、総容積(物質量)の変化にも影響を受ける」ので、それを表現する必要があります。
つまり、容積(物質量)の増加量=容積(物質量)の増加率×Aの転化率で表したいということになります。
容積増加率の求め方
aA+bB→cC+dDという反応があったとすると
全物質量は\(\ n_t=n_A+n_B+n_C+n_D\)と表されます。
A,Bはそれぞれ、\(\ n_{A0}x_A\),\(\displaystyle \frac{b}{a}n_{A0}x_A\)だけ消費され
C,Dはそれぞれ\(\displaystyle \frac{c}{a}n_{A0}x_A\),\(\displaystyle \frac{d}{a}n_{A0}x_A\)だけ生成されるので、
\(\displaystyle n_t=n_A+n_B+n_C+n_D=n_{A0}+n_{B0}+n_{C0}+n_{D0}+(\frac{-a-b+c+d}{a})n_{A0}x_A\)
ここで、\(\displaystyle {\delta}_A=\frac{-a-b+c+d}{a}\) , \(\displaystyle y_{A0}=\frac{n_{A0}}{n_{t0}}\)とおけば
\(\displaystyle n_t=n_{t0}(1+{\delta}_Ay_{A0}x_A)=n_{t0}(1+{\epsilon}_Ax_A)\)
と、このように容積(物質量)の増加量を初期値と転化率で表現することができました。
したがって、ある転化率での濃度は
\(\displaystyle C_A=\frac{F_A}{q}=\frac{F_{A0}(1-x_A)}{q_0(1+{\epsilon}_Ax_A)}=C_{A0}\frac{1-x_A}{1+{\epsilon}_Ax_A}\)
と、定容系(\(\ C_A=C_{A0}(1-x_A)\))より複雑な形になります。こいつの分子は「定容系での濃度変化」を、分母は「非定容系では容積(物質量)が増える」ということを表していて、直感によく従った形になっていることがわかります。

これ積分するのヤバそう。。
非定容一次反応の計算例
では、積分例を見てみましょう。
\(\displaystyle -r_A=kC_A=kC_{A0}\frac{1-x_A}{1+{\epsilon}_Ax_A}\)として
\(\displaystyle {\tau}=\frac{1}{k}\int_0^{x_A} \frac{1+{\epsilon}_Ax_A}{1-x_A}dx_A=\frac{1}{k}\int_0^{x_A} \frac{-{\epsilon}_A(1-x_A)+{\epsilon}_A+1}{1-x_A}dx_A\)
\(\displaystyle =\frac{1}{k}\int_0^{x_A} (-{\epsilon}_A+\frac{{\epsilon}_A+1}{1-x_A})dx_A=-\frac{1}{k}[{\epsilon}_Ax_A+({\epsilon}_A+1)ln(1-x_A)]\)
このように、面倒な計算となります。特に符号ミスしやすいので、慎重に計算してください!
ちなみに、定容系では当然\(\ {\epsilon}_A=0\)なので、これを代入すれば、定容系での答えと同じになることがわかります。
まとめ
まとめると、
- 定容系とは「反応混合物の体積が変わらない系」のことで「反応器の体積が一定の系」ではない。
- 定容1次反応では\(\displaystyle {\tau}=-\frac{1}{k}ln(1-x_A)\)
- 非定容1次反応では\(\displaystyle {\tau}=-\frac{1}{k}[{\epsilon}_Ax_A+({\epsilon}_A+1)ln(1-x_A)]\)
最後まで見ていただき、ありがとうございました!
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