こんにちは。化工見習いです!
今回は、量論や反応工学で出てくるリサイクルについて紹介します。
- リサイクルって何?
- リサイクル工程がある場合の収支が苦手。。。
リサイクルとは
例えば以下のような反応器があり、原料Aから製品Bを生産するとします。しかし、この反応器での転化率は50%なので半分はAとして出てきます。
このままでは原料が半分無駄になってしまいます。これを改善するためには、どんな手があるでしょうか?
その手の一つに、「未反応原料を反応器の前に戻す」手が考えられます👇
これこそがリサイクルです。もちろん未反応原料Aと製品Bを分離する機器を挟む必要はあるのですが、それさえクリアすれば簡単に転化率を向上させることができます。(後に解説しますが、この考え方を総括転化率という)
では次に、リサイクルを含むときの収支はどうなるのか、上のプロセスを例に解説していきます。
収支の取り方①
一つ目は、原料供給を始めてから、時間を追って流量変化を見ていく方法です。
①原料は100 kg/sで連続供給していて、これが最初反応器に入るとAが50 kg/s , Bが50 kg/s出ていきます👇
②未反応原料Aはリサイクルされ、原料A 100kg/sと合流し、150 kg/sで反応器入り口にやってきます👇
③すると次は、反応器出口で未反応原料A , 製品Bそれぞれ 75kg/sで出てきます。👇
最初は製品Bが50 kg/sしか生産されていなかったのが、75 kg/sに増えました!
④またまた、未反応原料Aと原料Aは合流し、175 kg/sとなって反応器に供給されます👇
⑤次は、製品Bが87.5 kg/s生産できるようになりました!
あとはこれを繰り返していきます👇
未反応原料Aと製品Bの流量がだんだんと、ある数字に近づいているのことに気づきましたか?
そうです。100 kg/sに近づいています。
収支は0にならなければなりません。入口からAが100 kg/sで流入するので、出口からBも100 kg/sで流出すれば定常状態となります。また、100 kg/sでBが生産されるのなら、転化率50%なので、反応器入り口にはAが200 kg/sで供給されなければなりません。なので、リサイクル流量(未反応原料A)も200-100=100 kg/sへと近づいているのです。
こちらの方法は、リサイクルのイメージが湧かない人向けで、実際に毎回こんなことしていたら、時間が足りません💦
収支の取り方②
二つ目は、収支が0になることを使って考えます。
先ほど述べたように、入口から原料Aが100 kg/sで流入するため、出口から製品Bが100 kg/sで流出するはずです。すると、転化率は50%なので、必然的に反応器入口には200 kg/sで流入しなければならないことが分かります。
したがって、リサイクル流量(未反応原料A)は100 kg/sとなります。
単通転化率、総括転化率
では話が少し逸れますが、
リサイクル工程を加えたことで、転化率はどうなったでしょうか?
たしかに反応器を一回通る時の転化率は50%のままですが、定常状態になったとき、入りと出を見ると
100 kg/sで流入する原料Aが、100 kg/sで製品Bとして流出しています。
ということは供給した原料Aがすべて製品Bに転化しているということです。このように、リサイクルを含むなどして、プロセス全体で見て原料がどれだけ転化したかを表す指標が、総括転化率です。
それと区別するため、反応器を一回通る時の転化率を単通転化率と呼びます。
したがって、単通転化率は反応器自体の性能を、総括転化率はプロセスの性能を表すと言っていいです。
例題
では、次に示すプロセスの収支を取ってみます。
分離塔の性能を先ほどと少し変えてみました。分離塔にやってくるAのうち80%はリサイクルされますが、残りの20%は製品Bと一緒に製品側へ流出します。ちなみに製品Bは完全に分離され、製品側へ行きます。
このプロセスが定常状態になったとき、収支はどうなっているでしょうか?また、総括転化率はいくらでしょうか?
答え
どのように解いてもいいですが、一例を紹介します。
反応器で反応しなかったA50%のうち、分離塔を通してリサイクルされるのは80%です。つまり、反応器に流入してきたAのうち、リサイクルされるのは40%ということになります。ということは、リサイクル流量を考えるにあたり、今回の例だと、反応器と分離塔を合わせて、反応率60%の一つの反応器と見なしても問題ありません。
よって、反応器入り口に流入するAの流量は60 kg/s/60%*100%=100 kg/s
つまり、リサイクル流量は100-60=40 kg/sとなります。
そして、Aが60 kg/sで流入しているのに対して、Bは50 kg/sで流出しているので、総括転化率は50 kg/s/60 kg/s*100%=83.33%
まとめ
実際にあるプロセスでも、リサイクルは必ずと言っても良いほど用いられます。化学工学では必ず必要な知識です。
今回は反応式も成分数もプロセスも簡単にしましたが、それらが増え、複雑になれば、マクロなどのプログラミングを組まなければ定常状態を計算が膨大すぎて人知では到底できませんので注意が必要です。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
コメント
コメント一覧 (2件)
とても分かりやすかったです。
コメントありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです!
これからも化工のお部屋をどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m