化学工学量論-2【物質収支/定常状態】

こんにちは!化工見習いです!

今回は化学工学量論-2【物質収支/定常状態】について解説していきます!

今回の内容をしっかり理解することで、今後学ぶ式はだいたい理解できます!逆に、ここが理解できなければ、今後化学工学を理解することは難しいでしょう。

目次

物質収支とは

まず、「収支」とはなんでしょうか。「収支」という言葉を検索すると

  • 「収入」と「支出」
  • お金の「出入り」

などと検索結果が出てきます。つまり「物質収支」とは「物質の入りと出」のことです。特に質量保存の法則が成り立つ場合においては、

「系に入ってくる質量ー系から出ていく質量=系に蓄積する質量」

となります。これは超重要事項です。

「系」を人体に置き換えれば分かりやすいです。

100 gのご飯を食べれば、直後には体重は100 g増えているはずですし、トイレに行ったり運動して汗をかけばそれだけ体重が減っているはずです。なので、摂取量>消費量となっている人は必然的に太りますし、逆もまた然りです。

化学反応においても同じです。化学反応を経て、物質のモル数が変化することはあっても、質量が反応前後で変化することはありません

定常状態とは

次に「定常状態」とは「系の状態が時間によって変わらない状態」のことです。これでは非常にざっくりしていますので例を挙げます。

まずは「終端速度」です。高校物理で習った終端速度をイメージすると良いと思います。

①ボールを落下させる。

②重力\(\ F=mg\)を受けてどんどんボールの落下速度\(\ v\)は速くなる。

③しかし空気から受ける抵抗力は\(\ v\)や\(\ v^2\)に比例するため抵抗力も大きくなる。

④いずれ重力=抵抗力となり、落下速度は一定(=終端速度)となる。

👆この④の状態が「定常状態」です。終端速度になってしまえばこの10秒後も1000秒後も終端速度のまんまです。このように、状態が時間の経過によって変化しないのが「定常状態」です。この考え方はかなり分かりやすい例かと思います。

次に料理を例に挙げます。肉を用意して、下から火であぶるとします。

①今、肉の温度は常温です。火をつけます。

②肉は加熱され、だんだん温かくなっていきます。

③肉の温度が上がると、肉からの放熱量も大きくなります。

④すると肉へ入る熱量=肉から出ていく熱量となり、ある温度に落ち着きます。

👆の④も「定常状態」です。この例では「温度」が時間によって変化しなくなった状態です。料理するとき、フライパンや食品はだんだん熱くなりますが、熱し続けても1000℃なんかにはなりませんよね?それは上記のような現象が起きているということです。

また、定常状態では系の状態は安定しているため、系に蓄積される質量=0となり、質量収支は多くの場合「系に入ってくる質量=系から出ていく質量」となります。

そして、定常状態ではない状態のことを「非定常状態」といいます。

定常状態と非定常状態では全く挙動が異なるため、両者を切り分けて考えることがとても大事です

例題

では例題です。

問1. 90 wt%塩化ナトリウム溶液を10 g/sで、水を500 g/sで同じ容器に供給する。定常状態における容器の出口から流出する塩化ナトリウム溶液の質量流量と濃度を答えよ。(溶液は供給した瞬間に均一に混合するものとする)

問1の答えをみる

この問題の状況を考えると、定常状態では、容器に蓄積される質量は0です。流入してきた物質(質量)が全て流出していきます。よって物質収支「流出=流入」ですので、流入について考えてやればいいです。

①【流入】について考える

塩化ナトリウムは10 g/s×0.9=9 g/sで流入している。

水は10 g/s×0.1+500 g/sで流入している。

②よって【流出】は

流出量=流入量=10+500 g/s = 510 g/s

また塩化ナトリウム濃度は9/510×100 wt% = 1.76 wt%

問2. 上記問題で、供給開始から定常状態に至るまでの「非定常状態」がどんな状態か想像せよ。

問2の答えをみる

これは、容器の大きさや形、供給口・出口の位置にもよるでしょう。

例えば、立方体の容器の下部に供給口、上部に出口があれば、供給開始から容器が一杯になるまで流体は出口から出てこないので、それまで定常状態にはなりません。

逆に立方体の下部に出口、上部に供給口があれば、供給開始からすぐにある程度流出することが予想できます。出口の位置や形状によって、すぐに定常状態になるか、時間がたってから定常状態になるかが変わります。

このように、定常状態では考えなくてよいことも、非定常状態だと考慮しなければならない場合があります。

両者は挙動が異なるため、切り分けて考える必要があるのです。

まとめ

今回は、物質収支と定常状態について扱いました。非常に大事な考え方ですので、必ず習得したいです。もし質問や分からないことがあればコメントいただけますと幸いです

私は化学工学を勉強して以来、身の回りの現象について自然と収支や定常/非定常状態を考えるようになりました

そうするとより、化学工学が理解できるようになりました。まずは身の回りの現象を、化学工学的観点から視てみることをお勧めします。

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この記事を書いた人

化学工学専攻/GPAが低めな大学院2年生
戦績:化学工学技士(基礎)S / TOEIC 890点 / 危険物取扱者甲種/高圧ガス製造保安責任者(甲種化学) / FP3級
特性 : 飽き性
趣味 : Netflix, Youtube視聴
勉強中 : 株の勉強を開始
化工見習い:見習いレベル3

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